「な、何を言い出すのよお母様」
「彼のことを話すお父様を見る美海ちゃんの顔、笑っていたわよ。
凄く幸せそうにね」
「……え…?」
「彼が“スクール・キラー”だって言っていた時も、信じられないって顔していたわよ」
あたしって、そんなにわかりやすい?
「美海ちゃん、彼のこと好きなの?」
「…………」
あたしは無言で、頷いた。
「……好き…」
声に出して言ってみると、思ったよりドキドキした。
一気に体温が上がった気がして恥ずかしくなって、膝の上で手を強く握った。
「彼ね…凄く、優しかったの。
あたしがいじめられても、彼だけは味方でいてくれたの。
あたし、何度も彼の笑顔とか優しさに惹かれたの。
きっとあたしがいじめに耐えられたのは、彼のお蔭。
彼がいなかったらあたし、きっと耐えられなかった。
だけど、彼は“スクール・キラー”で…。
あたしに近づいて優しくしたのも、あたしが不幸になるのを見たかったって。
最初は、信じられないって思った。
だけど、実際に“スクール・キラー”だった彼にいじめられた子がいて。
その子が嘘つくとも思えないし…。
諦めようとした、何度も。
あたしは彼を追う『いじめ防止委員会』の会員だから。
発起人の娘で、久我山を継ぐあたしが、彼を好きになってはいけないと思った。
だけど、諦めようとすればするほど、あたしは彼に惹かれていくの。
今学校に彼は来ていなくて、凄く心配なの。
本当は今すぐ家に突撃したいぐらい。
でも彼は、あたしを嫌いだと言った。
あたしの彼への気持ちを…否定された気分にあたしもなった。
だから、彼は絶対に会ってくれない。
また気持ちを否定するようなこと言われたら…あたし……」
あたしは両手で顔を覆い、ひたすら泣いた。


