里沙を裏庭へ呼び出すと、予想通り、里沙は警戒心剥きだしの目を向けてきた。
教室で耳にする間延び口調が、やけに演技めいている気がした。
里沙は元々、間延び口調じゃなかった。
ただ、普段は放任するくせに、遅く帰ると過剰に心配する両親への反抗として、厳格な父の嫌う間延び口調を使っているのだ。
それを遊びだと言って、時々娘を叱る父。
それに反抗し続ける娘。
…仲良い父子だと思っていたけど、そうでもないみたいだな。
羨ましいとも思っていたけど。
結局皆、うわべだけの関係だったってことか。
本当はりーちゃんなんて呼びたくない。
だけど、こっちの方が彼女にとっては効果的だ。
俺はあえて、呼びたくない方で呼んだ。
「りーちゃんに聞きたいことがあるんだ。
どうして佐山妙子は、久我未美子…違う、久我山美海をいじめるんだ?」
佐山が何故、俺の正体を知っているのかも知りたい。
だけど、そっちも聞きたかった。
勿論里沙は反論した。
りーちゃん、と呼んでも答えない。
手を叩かれて、思わず平手打ちしてしまったけど、言わない。
あくまで、守るんだ。
佐山との間に流れる、黒い秘密を。


