佐山は保健室に行った。
まさかかつて自分がいじめて転校へ追い込んだ奴がいると思っていなかった俺は、内心酷く動揺していた。
聞きたい。
何で佐山が、俺を知っているのか。
忌まわしき、異名も。
誰かに聞きたい。
誰に聞く?
佐山以外の、誰か。
佐山と最も親しい人物は、誰だ?
俺は教室を見渡した。
―――窓際の席に座り、ぼんやり窓を眺めている、あの子の姿が見えた。
僕はあの子にメールを送った。
本当は関わりたくない。
あの子といると、悔しくなるんだ。
何もかも持っている、異父妹が。
家族が、いる。
血の繋がった、暴力とは無縁な、両親が。
娘のために、異父兄(おれ)の進路を変えた父がいる。
娘と出掛け、常に笑顔の、母がいる。
お互い信頼し合う親友と呼べる存在もいる。
例えいじめられるかもしれない危険な立場でも、一緒に戦ってくれそうな親友がいる。
それだけで、十分なはずだ。
あの子といると。
悔しいんだ。
俺が一生かかっても手に入れるのが難しそうな、大事な存在がいるから。
羨ましくて、しょうがないんだ。


