「どうぞ、お嬢様」
「ありがとう、いただくわ」
フォークでチーズケーキを切って、口へ運ぶ。
なめらかなチーズの味が、いっぱいに広がった。
チーズの味を堪能した後は、村瀬の淹れてくれた紅茶を飲む。
「やっぱり村瀬の紅茶が1番だわ」
「ありがとうございます、お嬢様」
このひと時が、あたしにとっての幸せ。
学校にいると上がって行く、憂鬱のメーターが下がっていく気分だわ。
「ところでお嬢様。
体育科の先生から、先ほど電話が」
「電話?
…もしかして、久我山の人間だとバラした方が良いとか言うんじゃないでしょうね?」
「その通りでございます、お嬢様」
「…今度先生から電話がかかってきたら言って。
あたしが何故、久我山の人間だと言わないで生活しているか、理由を知らないみたいだから。
校長先生に聞きなさいってね」
「かしこまりました」
あたしは溜息をついて、紅茶を飲む。
『お願いじゃ、久我山様…!
金ならいくらでも払うから……!』
悲痛な表情で、あたしへ土下座してきた校長先生の姿が、
脳内を掠めた―――。


