ある日のこと。
未美子ちゃんにいつも通り、話しかけて一緒に下駄箱へ向かうと。
彼女の上履きがなくなっていた。
今までは、かなり緩いいじめだった。
誰かが動画でも撮っていないと、証拠にならないようなちっぽけないじめばかりだった。
…俺が小学生の頃と、随分変わったな。
あの頃は、俺を階段から突き落として骨折させるような程だったから。
だけど今回、初めて上履きが隠された。
小学生の頃の俺にとっては、日常茶飯事な出来事だったけど。
彼女は、未美子ちゃんは、そこで初めて泣いた。
職員室へ彼女をお姫様抱っこして運ぶ、俺の腕の中で。
声は殺しているけど、体は素直に震えている。
やっと、見れた。
彼女が、未美子ちゃんが、不幸になる姿を。
制服に彼女の涙が染みる度、俺は笑いそうになるのを必死にこらえた。
職員室の前に着いて、降ろしてあげる。
未美子ちゃんは靴下で廊下に立ち、俺を見て笑った。
「ありがとう真宮くん。
真宮くんがいてくれたから、あたしは耐えきれるんだよ。
…本当に、ありがとう」
俺は酷く驚いた。
だけどすぐに笑顔を作った。
未美子ちゃんの味方だ、と言うと、
彼女は安心した様に職員室へ入って行った。


