オリエンテーションが終わり、本格的に授業が始まって数日。
俺は確実に、彼女との距離を縮めていた。
真面目らしい彼女は、毎日登校時間は似たようなもの。
その時間に学校に間に合うよう家を出て、わざと彼女に会った。
その理由は、教室にある。
俺の予想通り。
未美子ちゃんは簡単に、いじめのターゲットになった。
「さすが“スクール・キラー”の異名を持つだけあるな、俺も」と自画自賛してしまったほどだ。
教室に入って、傍観者特有の冷たい視線を受けながら、未美子ちゃんは席へ座る。
それを気にせず、未美子ちゃんの席へ行き、積極的に話しかける俺。
「大丈夫?」と心にもない慰め言葉をかける。
弱々しい笑顔で、彼女は「大丈夫」と微笑んだ。
そうだよ。
俺はこの笑顔が見たかったんだよ。
今にも折れてしまいそうな、だけど頑張って折れまいと明るく振る舞う、その笑顔が。
「何しているんだよ」
未美子ちゃんの上履きをビショビショに濡らそうとするクラスメイトを見つけ、思わず止めたこともあった。
だけどそれに優しさなんて微塵も含まれてない。
「何だよ、色男。
久我の味方すると、てめぇもいじめられっぞ」
「別に構わないよ。
僕は僕の意思で、彼女の傍にいたいんだ」
我ながら、どこの青春ドラマだよと突っ込んだ。
口にはしなかったが、その後にはこう続けそうになり、自制していた。
別に構わないよ、いじめられても。
僕は僕の意思で、彼女の傍にいたいんだ。
―――彼女がいじめられる姿を、間近で見ていたいんだ。
―――彼女が不幸になる姿を見て、笑ってあげたいんだ。
不幸になるのが見られるのなら。
―――いじめられても、構わないよ。
傷つくのは、
慣れているからね……。


