「里沙」
声をかけると、里沙と2人で話していた女子―――今思えば、佐山だった―――と共に、里沙はこっちを向いた。
里沙は俺の顔を見た途端嫌そうに顔をしかめ、友人らしき人物と別れ、俺の方へ来た。
「何でいるのよ、美弦」
かつてお兄ちゃんと呼んでいた里沙だけど。
今では美弦と呼び捨てだ。
…別に俺は里沙の本当の兄じゃねぇから、良いんだけど。
「…お義父さんから、一緒に帰れって言われてんだよ?」
「パパが?
もー、嫌なっちゃうなぁ。
パパにはリサから連絡しておくから、美弦は独りで帰って良いよ」
「……わかった」
里沙と別れ、入学式のために学校が借りたホールから出る途中。
俺は生徒手帳を落とした。
「ツイてない」と思って拾おうとすると、サッと拾われ、目の前に差し出された。
「どうぞ」
「あ…ありがとう」
反射的に笑顔を作り、拾ってくれた女子を見た。
長いけど腰より上の、真っ直ぐな黒髪。
顔の半分が隠れてしまう、長い前髪。
スカートは踝辺りまでの長さで、校則違反なんて全くしていないきっちりとした着こなしの女子だった。


