広々とした、たまにバーベキューなどを行うベランダ。
そこに設置されている洗面所へ向かい、手洗いうがいをする。
顔を洗うため前屈みになると。
バサッと、腰までは短い黒髪が顔にかかった。
あたしは洗面所の戸棚に仕舞われている、ゴムを取り出して、長い黒髪を結んだ。
本物のダイヤモンドが煌めく黒いゴムで、ポニーテールにする。
顔の半分を覆ってしまう前髪は、良く出来たウィッグだから、外した。
本当のあたしの前髪は、丁度眉毛が隠れるぐらいの長さだから。
髪の毛をセットしたところで、長い踝辺りまでのスカートに、第一ボタンを閉めたワイシャツが気になった。
1回部屋の中へ戻る。
制服を脱ぎ、あたしは涼しげな水色のワンピースに履き変える。
膝までの短いワンピースだから、学校でのように、足が隠れることもない。
そんなワンピースに似合う、アクアマリンのついたネックレスをつける。
全身鏡の前に立つと、あの学校での地味子―――久我未美子じゃない。
久我山家を継ぐ次期社長―――久我山美海だった。
ふっと笑って、再びベランダへ向かうと。
3回のノックの後、村瀬がはいってきた。
「失礼します、お嬢様」
無駄のない動きで、村瀬は手にあたしの頼んだチーズケーキを持ち、ベランダへとやってきた。


