「男子校だと、里沙が通えないじゃないか」
「……はあ」
「里沙と同じ高校に行きなさい。良いね」
話しながら珈琲を淹れていたお義父さんは、淹れ終えたらしく、階段を上り始めた。
俺は膝の上に置き、開いたままだった本を閉じ、立ち上がってその背中に問うた。
「待ってください。
高校へ行くのも決めるのも、僕が決めることだと思うんです。
何故、里沙…いや、りーちゃんと同じ高校へ行かないと駄目なんですか。
どうして男子校へ行ったら駄目なんですか?」
男子校だ、と言いながらも学費は安い。
部活に入るつもりなんてないから、部活にかかる費用もない。
しろと言うのならバイトも出来るよう、バイトオッケーの高校だ。
お金に関して、問題などないはずだ。
「駄目に決まっているだろう。
里沙と毎日一緒に帰ること、良いな」
「どうしてですか?
小学生じゃあるまいし。
りーちゃんだって、友達と一緒に過ごすことの方が多いでしょう」
「……わかってないな、キミは」
俺に背を向けていたお義父さんが、くるりと俺の方を向いた。
「キミは、この家の、言わば居候だ。
一家の主であるオレに逆らえると思うな。
本当はキミをすぐにでも追いだしたい。
キミの本当の父親ぐらい、簡単に探せる。
だが、そんなことをすればオレの評判に関わる。
だからキミはこの家にいられるんだ。
大事なことだから二度言う。
キミは居候なんだ。
この家のお嬢様である里沙を守るのが、居候のキミの仕事だ。
黙って大人しく、引き下がれ。
嫌なら、この家を出て行くんだな。
警察の厄介になったら、ただじゃおかねぇからな」
唖然として棒立ちする俺を見て舌打ちをすると、お義父さんは階段を上り、バタンッと乱暴に扉を閉めた。
…リビングに、静寂が広がった。


