「お帰りなさいませ、お嬢様」
丁寧にお辞儀をする、燕尾服の男性。
名を村瀬(むらせ)といい、あたしの専用執事だ。
あたしが偽名や、地味子の格好をして学校に行く理由を知る、数少ない人物。
「ただいま、村瀬」
あたしは靴を脱いで、村瀬に鞄を渡す。
「今日はどうなさいますか?」
「部屋で食べるわ。
そうね…チーズケーキを頼むわ」
「かしこまりました」
あたしは村瀬の横を通り過ぎ、家の中にあるエスカレーターに乗り込んだ。
階段も勿論あるんだけど、距離が長いから。
あたしは普段、エスカレーターを使って、自分の部屋へ向かう。
最上階に作られた、あたしの部屋。
両開きの扉を開いて、中へ入る。
女子高校生の部屋にしては広すぎるけど、広いのがやっぱり良い。
狭い場所で窮屈に暮らすなんて、嫌だわ。
今日は天気が良いから。
ベランダに設置されている、パラソル付きのテーブルと椅子の所へ向かう。


