離婚して数日。
俺は狭いアパートで、母さんと暮らしていた。
母さんを殴りつける父さんはいない。
「母さん、良かったね。
これで僕たち、幸せになれるね」
アパートから見える景色をぼんやり見つめる母さんに、俺は声をかけた。
明るく声をかけたつもりだった。
だから、母さんから拳が飛んで来た時には、酷く驚いた。
「アンタのせいよ、美弦…」
「何で…」
殴られた頬を抑えながら、俺は尋ねた。
「アンタがいるから、ワタシはアイツと離婚したくても出来なかったの!
アンタの存在が、ワタシを苦しめていたの!
アンタには、その自覚ってものがないの!?
僕たち幸せになれるね、って何よそれ!
アンタが幸せになるのなんて、許されるわけないでしょ!?
幸せになって良いのはワタシだけ!
アンタは幸せになんてならないで!!」
前は、父さんが母さんを殴っていた。
だけど今は、母さんが俺を殴る。
「やめて!
母さん、ごめんなさい!
僕、幸せになんてならないから!
お願い、ごめんなさい!
幸せになんてならないから!
お願い…許して―――……」


