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「ごめんなさい!アナタ!!」
俺の、街から離れた平屋の家には、母さんの泣き叫ぶ声が何回も響いていた。
俺はその姿を、ふすまの影から見ていた。
「…美弦か」
「!」
俺の視線に気が付いたのか、静かに俺の名前を呼ぶ父さん。
小さな丸眼鏡をかけたこの男が、俺の実の父親。
「美弦は気にしなくて良いんだぞ?
母さんと父さんは、仲良く遊んでいるだけなんだから」
そう言って微笑みながら、母さんの髪の毛を引っ張って自分の方へ寄せ、お腹を思い切り蹴飛ばす父さん。
俺は見ていられなくって、何度も光景を目撃しては自室へ逃げ込んだ。
数年後。
父さんと母さんが離婚した。
父さんが、母さんが別の男と浮気していたことを、遂に知ったらしい。
最後の最後まで、母さんを殴りつける父さんを見て、俺は溜息をついた。
何で気が付かないかなぁ、父さんは。
ずっと前から、母さんは別の男と付き合っていたって言うのに。


