「リサの家は複雑なの。

アイツの両親は、アイツが幼い頃に離婚したみたいで。
詳しいことはよく知らないんだけど、アイツは母親に引き取られたのね?

アイツの母親って人が、リサの産みの母親なの。
アイツの両親が離婚した原因は、母親が、リサのパパと浮気していたのが原因みたい。

ママは、アイツの父親と離婚した後、正式にリサのパパと結婚したの。
だからママに引き取られたアイツは、リサの同い年の、お兄ちゃんになったの。
同い年だけど、アイツの方がリサより誕生日が早いからね」





そう、だったんだ……。




「ちなみに、リサの名字橘は、パパの名字なの。
ママは離婚した後正式に橘になったけど。
アイツは橘じゃないから、兄妹だってわからないも無理はないかも。

兄妹って言っても、父親の違う異父兄妹だけどね」




そうだ…。

里沙の名字、橘の人は学年に里沙しかいない。

兄妹ってことも、言われなければ気が付かなかったかも。





「アイツを…お兄ちゃんを…“スクール・キラー”を、捕まえて。
本当は黙っておくつもりだったけど、嫌だよ。

アイツ、昨日言っていたんだ。
久我さんを…オモチャにしてあげるって」




オモチャ!?

何でオモチャになんてされないといけないのよ!





あたしの中で、

今まで貯めてきた黒き渦が、静かに、だけど激しく動き出した。





「里沙、ソイツの名前を教えて。
一緒に、どこかでソイツへわからせてあげるから。

いじめはイケナイんだって…」






あたしとは裏腹に、妙子も里沙も複雑そうな顔をしていた。





「……あのね…アイツの名前はね……?」











「……え………?」











『未美子ちゃん』





優しい眼差しの彼が、

脳裏をよぎった。