「誰かは自分に甘すぎるがな」
誰かとは誰の事でしょうか。
ブーメランとして帰って来て耳が痛いです。
「新さんはピアノ弾けたり、実は空手黒帯とか書道の名人とか他にも身に付けている技術ってあるんですか?」
「は? 兄貴と一緒にするなよ。あいつが怪物なんだから」
また強い口調で言われてしまったけれど、それと同時にシアター内が暗くなり映画が始まったので私たちは会話を止めた。
映画は、あるカフェの一日を切り取られたような、とりわけ衝撃的なハプニングが起こるわけではないのだけれど、登場する人物たちには人生が変わるような、選択だったり出来事だったり。
1つ1つのエピソードが丁寧に作り込まれていて、心があったかくなる話だった。
ちらりと横を見ると、新さんは手に持ったポップコーンを指先でコロコロ転がしながら、食べるのさえ忘れて魅入っている。
その真剣な横顔は、思わず息を飲んでしまいそうだった。
隣にいるのに、何だか心が体がピリピリと緊張してしまうのが分かった。



