理想の恋人って!?

 このやりとりだけで、さっきまでの沈んだ気持ちが一気に吹き飛んだ。晃一ともう少し一緒にいられるんだと思うと、自然と顔がにやけてしまう。

 並んで階段を下り、同じリズムで足を踏み出し、同じリズムで靴音を立てる。それだけなのに嬉しい。

 ホームに下りるとすぐに電車が到着した。車内は混んでいなかったけれど、座席は全部埋まっていたので、二人でドアの横に並んで立った。

「足、大丈夫?」

 晃一が気遣うように私を見た。

「うん、絆創膏貼ったから」
「ならよかった」

 車内の明かりを反射した窓に、私と晃一の姿が映る。こうしてみると本物のデートみたいだな~なんて思っていると、目が合った晃一が口を開いた。

「やっぱ無理があったよな」
「どういう意味?」
「明梨はやっぱりスニーカーの方がいいよな」

 そう言って晃一が小さく笑った。私は晃一の理想とは真逆だということを念押しされた気分だ。

「晃一は十センチヒールを履きこなせる人が理想なの?」

 私が問いかけたとき、電車がガタンと大きく揺れた。

「きゃ」

 とっさに目の前にあった晃一のシャツの腕を右手でつかんだ。それと同時に私の腰に晃一の左腕が回される。