理想の恋人って!?

 私が黙ったままだからか、晃一も無言で歩いている。それ以上会話が発展することなく、ほどなくして駅に到着した。私は実家に、晃一は大学の近くのマンションに帰るのだから、方向は逆だ。

 私は改札を通り、ホームに下りる階段の手前で足を止めた。

「晃一、今日はありがとう」
「礼はまだいいよ」

 私の言葉に、晃一が軽く左手を振った。

「なんで?」
「明梨、言ってただろ、俺とデートしてるって」
「うん……」
「だから、家まで送る」
「え?」
「明梨の家まで送る」

 私の実家まで行って晃一のマンションに戻るなんて、二時間以上もかかってしまう。晃一の申し出は嬉しいけれど、帰宅が夜中になるのは気の毒だ。

「いいよ、そんなの。遠回りになるし」
「今日は俺も実家に泊まるから大丈夫だって」
「そうなんだ」

 それならお言葉に甘えちゃおうかな、と思ったとき、晃一が腰を折って恭しく階段を示しながら言う。

「それにまだデート中ではありませんでしたか?」

 そうして目をくるりと回していたずらっぽく笑った。つられて思わず笑ってしまい、同じノリで返す。

「では、お願いいたしましょうか」