理想の恋人って!?

 誠一さんが笑みを浮かべて言った。今までで一番大きな笑顔だ。車を借りるためにお邪魔した私たちだったけど、誠一さんの言葉通り、本当に気分転換になったのなら嬉しい。

 私はもう一度お礼を言って、晃一とともに誠一さんの部屋を出た。共用廊下を照らすライトの下を並んでエントランスへと向かう。

 晃一が小さく咳払いをして言った。

「あのさ……」
「うん」
「俺が着替えてるとき、兄貴と二人きりで何を話してたんだ?」
「えーっと……」

 誠一さんとのやりとりを正直に話そうか? でも、あのときの誠一さんは酔ってたみたいだし、いろいろあって疲れていたんだと思う。普段なら私なんかにあんなことを言ったりしないはずだ。忘れてくれって言ってたし、余計なことは言わない方がいいよね。

 だから「まあ、いろんなこと」とだけ答えた。

 私の返事を訊いて、晃一がおもしろくなさそうな声で言う。

「何だよ、その濁し方」

 やだな、不機嫌そう。あちらを立てればこちらが立たず、だ。

「えっとね、人の気持ちって変わってしまうものなんだなって感じのこと」
「ふーん」