理想の恋人って!?

 人心地着いたから走り出すものだと思っていたのに、晃一はまだハンドルに両手をかけたままで、じっと前を見ていた。

「どうしたの?」

 私の問いかけに、彼は視線を動かさずに答える。

「兄貴さ……彼女と別れたんだって」
「え?」

 なぜ今、誠一さんの話が出てくるのかわからず、私は晃一をじっと見つめる。

「車を返しに行くとき、明梨も一緒に来いよ」
「えっ、家まで送ってくれるんじゃないの?」

 デートだから送ってもらえるものだと思ってたけど、今乗っているのは誠一さんの車だ。それに、私を送ってから誠一さんの家に車を返しに行けば、晃一の帰りも遅くなってしまうだろう。

「そうだよね。誠一さんに車を貸してもらったお礼も言わなくちゃいけないしね」

 そっちも大切だ。靴擦れの方はどこかのコンビニで絆創膏を買ってトイレで貼って、なんとかしのごう。

 あきらめ気分で息を吐いたとき、晃一が口を開いた。

「そうじゃなくてさ、兄貴、今フリーなんだよ」
「じゃあ、一緒に晩ご飯でも食べる? 車を貸してくれたお礼に私たちで何かごちそうするのもいいね」
「そうじゃなくて」
「何?」
「だからっ」
「だから、何なのよ?」