理想の恋人って!?

「なんでもない。遅くなるし、そろそろ行こう」

 さっきと同じように立ち上がって、一人で先に階段を上ろうとする。

「あ、晃一」

 私は彼の背中に声をかけた。「あのね、ちょっと手を貸してほしいんだけど」

「どうして?」
「あー、かかとが……」

 痛くて何かにつかまらないと立ち上がれそうにない。

「かかと?」

 晃一が怪訝そうに言った。

「うん……。ちょっと靴擦れしちゃって……」
「だからか」
「だからかって?」
「ときどき、なーんか様子がおかしいなって思ってたんだよ」

 晃一はそう言いながらも、左手を差し出してくれた。それにつかまって立ち上がろうとしたけれど、かかとの痛みに晃一の手を握る手に力が入ってしまう。

「っ……たっ……」
「歩ける?」
「んー……なんとか……がんばる」

 座っている間、痛みを忘れていたかかとが、脈打つたびにズキンズキンと激しく痛む。

 晃一の腕にしがみつくようにして立ち上がると、彼に大きなため息をつかれた。

「無理して我慢してどうすんだよ」
「ごめんね」
「なんで謝るんだよ」
「だって……晃一の理想の女性になりきれてないもん」