理想の恋人って!?

「も、もーっ、いつまで握ってるねん! えーかげんにしはなれ!」

 とっさに手を引き抜いて、晃一の二の腕に手の甲でビシッとツッコミを入れていた。

「え?」

 きょとんとした顔をする晃一に、私はほてって仕方のない頬をごまかすようにまくし立てる。

「あのねっ、うん、確かに本当に理想のデートになったと思う。人気店を予約してくれて、一緒に映画を見て、きれいな夕焼けを見せてくれて。だから、もうこれ以上理想の恋人のフリなんかしなくていいよっ」

 一気にまくし立て、ぜいぜいと肩で息をした。そんな私を見て晃一はわずかに口元をゆがめた。笑みのような、そうでないような彼の表情が、薄闇の中に溶けて見えなくなる。

「もう俺は必要ない?」
「え、そういう意味じゃなくて、理想の恋人のフリはもういいよってこと」
「そうだよな。明梨の理想の恋人は俺とは違うみたいだからな」

 そう言って晃一が立ち上がった。両手をポケットに突っ込んで、促すように私を見て言う。

「送ってく」
「あ、うん」

 そうか、もう帰るんだ。太陽もすっかり沈んでしまったし、デートもおしまいってことなんだよね。

 そう思うと、どうしてだろう、なんだか物足りないような、すごく中途半端な気分になる。陽太たちと四人で遊びに行ったときには、こんなふうに感じたりしないのに……。