理想の恋人って!?

「さすがに今時期は泳いでいる人はいないな」

 晃一が言って、促すように私を見ながら歩き出した。少し遅れて彼に続き、駐車場の外れへと向かう。コンクリートの堤防の間に狭い階段があったので、晃一に続いて下りた。ほんの五、六段ほどなのに、足を下ろすたびにかかとがえぐられるように痛む。

 痛いって言いそうになるのを、歯を食いしばってこらえる。もう限界かもしれない。

 視線の少し先では、晃一が砂浜へと足を踏み出していた。艶のある革靴で乾いた砂を踏みしめ、かすかな音を残しながら波打ち際へと歩いて行く。

 さすがに十センチヒールでは砂に埋まって歩きにくいだろうし、これ以上足を酷使しないためにも、私は階段の一番下の段で足を止めた。

 私が歩いてこないのに気づいて、晃一が立ち止まって振り返った。

「どうした?」
「あ、うん、歩きにくそうだし」
「ああ、そうか」

 晃一が気づいて戻ってきて、一番下の段に腰を下ろした。私も並んで座る。水平線に近づいた夕陽が海にオレンジ色の光を落とし、水面でキラキラ揺れる光が橋のように私たちの方へ伸びている。。

「確かにきれい」

 感嘆のため息混じりの私の言葉に晃一が答える。