理想の恋人って!?

 運転席に座ってエンジンをかけた晃一が言う。

「CD、用意してなくてごめん。FMでいい?」
「うん、何でもいいよ……」

 投げやりな気分で言って、私は窓の外に視線を向けた。六時に近いけど、夏の夕方はまだ長い。

 スーツ姿でレディーファーストをしてくれる男性が理想だと思っていたけど、それだけじゃ違う気がする。

 そもそも私の理想って何なのだろう。確かに訊かれれば答えられる理想の男性像はあった。それにぴったり当てはまる、理想としている人もいた。

 でも。

 その人への想いは叶わないまま終わってしまった。それでもその人のような男性を理想の恋人だと思っている私は、まだ彼のことを吹っ切れていないのだろうか。

 そう考えて一人で首を振る。

 もう吹っ切れたはずだ。二年近く会っていないもの。それに会ってみたいとは思うけれど、会いたいとは思わない。

 沈んだ気持ちのまま窓の外を見ていると、車はやがて緩やかな坂道を下り始めた。海岸通りを示す道路標識が見えてきて、カーブを曲がったとたん、茜色に染まり始めた空と海が目の前に広がった。

「わあ……きれい……」

 目に染みるような深いオレンジ色に、思わずため息を誘われた。

「ホントだな」