理想の恋人って!?

 そう言って晃一が手を離したので、私の二の腕から晃一の手が離れた。恋人じゃないんだからそれは当たり前のこと。なのにその瞬間、心許なく感じたのは、十センチヒールで歩く自信を失ってしまったからなのかもしれない。でも、もしかしたら、大きくて力強い晃一の手が離れてしまったからなのかも……。

 その考えを打ち消すように、私は首を振って出口へと向かった。ゴミを捨てた晃一が私を見る。

「少し気分を変えてからの方がよさそうだな。ちょっとドライブしようか」
「えー、どうして?」
「ひどい顔してる」

 言われて私は思わず両手で頬を押さえた。

「ホント?」

 泣いたせいでマスカラが落ちてしまったんだろうか。

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」

 晃一に断って、近くの女子トイレに行き、鏡に映る自分の姿を見た。パンダ目にはなっていないけど、なんだか疲れた顔をしている。朝、髪をカールさせていたときに覚えたワクワク感はどこへ行ってしまったんだろう。

「こんなんじゃ晃一の理想の女性には程遠いだろうなぁ……」

 ため息混じりにつぶやきながら、トイレを出た。晃一と一緒にエレベーターに乗り、駐車場に戻る。彼が助手席のドアを開けてくれて、ああ、私の理想の男性を演じてくれているんだな、と思う。