理想の恋人って!?

 その少し前、アレクシアの勤務先の科学機関では、職員や研究者が地下シェルターへの避難を終えていた。誰もがどうにかして家族や友人と連絡を取り、そこに呼び寄せようと必死で携帯電話や携帯端末を操作している。不安と恐怖、混乱に支配されたパニック寸前のシェルターで、さえない風貌の男性科学者、フィリーが、非常用コンピュータを黙々と操作していた。彼は各地の防犯カメラにアクセスして、その映像を調べているのだ。

 アレクシアから具合が悪いので病院に行くと聞いていた彼は、同僚である彼女の身を案じていた。フィリーはアレクシアの自宅付近の防犯カメラに次々とアクセスし、彼女がレプタノイドにつかまった映像を目にする。

「なんてこった」

 愕然として両手で顔を覆うフィリー。だが、すぐに決意を秘めた目で顔を上げた。

 彼は以前、アレクシアに告白して振られていたものの、いまだに忘れられず、彼女を救いに行こうと考えたのだ。周囲の反対を押し切って一人で地下シェルターを抜け出し、持ち主のいない自転車に跨がってよろよろとこぎ出した。首都に着陸している宇宙船に向かったものの、腕力のない彼は途中であっさり捕獲されてしまった。

 一方のアレクシアは宇宙船内の独房で高熱に苦しんでいた。そこへフィリーが連れてこられるが、彼を連れてきたレプタノイドの様子がおかしいことに気づく。アレクシアの高熱の原因は、実はインフルエンザウイルスで、宇宙人は地球の病原菌に対して免疫がなかったため、次々に感染して倒れていく。アレクシアは宇宙人の弱点に気づき、そのことをどうにか軍関係者に知らせようと決意する。