その人は落ち着いた様子でゆっくり話し出す。
「佐野 新です!23歳です。
皆さん、今日からよろしくお願いします!」
「えー、担当は理科です。
あ、因みにこれは地毛ね。」
低くて優しい声でそう言うと、
茶色い柔らかそうな髪を指してはははって笑う。
一気に体温が上がる。
顔が熱い。
目が離せない……
佐野先生。
どうしよう、好き。
なんて、会ってすぐに思ったのは人生で初めてで。
今まで好きになった男の子とは違う。
"男の人"に初めて出会った。
窓の外の天気はもう目に入らない。
その人を一瞬でも見逃したくないから。
ドキドキドキ…
私、人生初の一目惚れしちゃったんだ……!
さっきから、ときめいて止まらないその相手は。
─────佐野 新先生。
学年集会が終わる頃には、頭の中はまだよく知らない佐野先生のことでいっぱいになった。

