「彼女は僕たちのこと、覚えてないみたいだけどね……」

 花城が藤堂誠一と初めて出会ったのは小学校の時だった。藤堂は両親が共働きで経済的にも苦しく、流行りのゲームなどの遊び道具を一切持っていなかった。そのせいか、藤堂はよくみんなの輪から孤立していた。

 花城もまた、欲しいものはなんでも手に入る環境に生まれ育ちながら、周りの流行りものにはまったく興味がなかったためにクラスの中でも異端な存在だった。

 ――藤堂ってさ、独りでいてつまんなくないの?

 ――独りでいる時間をどうやって使うか考えるのが好きだから、つまらなくないよ。