その唇に魔法をかけて、

※ ※ ※

 ――翌日。


 マルタニ商事の一行は、漆畑の騒動にも気づくことなく黎明館を後にした。すっかり意気消沈した漆畑もきっちり牧田に監視されながらバスに乗り込んでいった。

「おい」

 玄関で一行を見送り、ようやく一段落したとほっと胸をなでおろしていると、美貴は背後から声をかけられた。

「花城さん……」

「昨日は悪かったな、怖い思いさせた」

 花城がバツが悪そうに睫毛を下げる。

 昨夜はあのあと、藤堂に車で寮へ送ってもらった。漆畑のことを思い出すたびに身体が震えて美貴は部屋に着くまで一言も喋らなかった。

「すまない……」

「そんな! 花城さんは助けてくれたじゃないですか、私がもっとしっかりしていれば良かったんです」

 花城の顔を曇らせているのは自分だ。そう思うと美貴は胸を締め付けられるような気持ちになった。