その唇に魔法をかけて、

「専務、いえ……漆畑さんにひとつ報告があります」


 牧田が眼鏡のブリッジをクイッと押し上げると、抑揚のない口調で淡々と語りだした。


「ご存知ないかもしれまんけど、あなたのセクハラ行為はうちの社内でもかなり問題になってるんですよ? まさかとは思いましたが、社内のみならず外部にまで迷惑行為に及ぶとは情けない……このことは社長に早速ご報告申し上げねばなりません」


「な、ななな――」


 徐々に酔いが醒めてきたのか、理性を取り戻した漆畑が口をパクパクしながら顔面蒼白になっていく。そしてお縄をかけられた下手人のように漆畑はがっくりとうなだれ、抵抗する余地なしとしなしなと萎えていった。


「うちの従業員もてめぇのせいで嫌な思いをしたんだ。この落とし前はきっちり付けさせてもらうから社長によく言っておけ」


「誠に申し訳ありませんでした。日を改めて高林の方からご連絡いたしますゆえ……」


 花城が腕を組みながら憮然と言うと、牧田は冷静に深々と頭を下げた――。