その唇に魔法をかけて、

「うちの仲居を押し倒していたように見えましたが? 何をされていたのでしょうか? 彼女も相当嫌がっていたのにそれでもお座敷遊びだと? それに仲居と芸者の区別もつかないくらいに相当酔ってらっしゃるみたいですが?」

 捲し立てるような花城に言い返せず、漆畑がぎりぎりと奥歯を噛みしめる。

「ぐ……うぬぬ、こっちは客だぞ? 客人にそんな口の利き方して生意気な男だ。調子に乗るのもいい加減にしないと、うちとの契約を切ったっていいんだぞ」

 まるで脅すような物言いに、花城は眉ひとつ動かさず口を開いた。

「秩序のない方をお客様扱いする必要はありません。契約を切る? えぇ、構いませんよ、食品卸の業者は、別にお宅のところだけではありませんから、こちらから解約しましょうか?  あぁ、その際に高林社長からその理由を尋ねられたら、その理由を話さなければなりませんね」

 口の端を押し上げ花城は薄っすらと笑む。完全に畳みかけられた漆畑はぐぅの音もでない様子で低く唸る。

「総支配人!」

 藤堂が秘書を連れてやってくると、花城は小刻みに震えている美貴を藤堂に押しやった。

「こいつを早く落ち着ける場所に連れて行ってやれ」

「承知しました」

 藤堂から優しく背中を撫でられると、美貴は安堵で涙が溢れ出した。

「わ、私――」

「ここは総支配人に任せて行きましょう。寮まで送りますから」

 花城は藤堂が美貴を連れて行くのを横目で確認すると、獣のようにいきり立っている漆畑を見下げた。