その唇に魔法をかけて、

(え? ちょっと!? 二人だけにしないで~!)

「やっと邪魔者はいなくなった。ほら、もっとこっちにおいで」

 腰に回された腕にぐっと引き寄せられると、ムッと酒臭さが鼻をつく。

「知ってるかい? いま目の前にあるご馳走や酒、これら全てうちの会社が卸してるものなんだよ」

 マルタニ商事は黎明館と契約のある食品酒類卸商社だと聞いていた。漆畑はこれみよがしに自慢話をだらだらとし始める。

「すごいだろ~? 黎明館はマルタニあってこそなんだよ、龍也さんの代まではもっと懇意にやっていたもんだが……」

 酒に酔っていたはずの漆畑の顔色が曇って、ボソボソと呟くように美貴に愚痴る。

「龍也さんの息子の代になってから、付き合いも前ほどではなくなった。これも全部あのクソ生意気な若造のせいだ!」

 かなり悪酔いしている漆畑に何もすることができず、美貴はただ早く時が過ぎることを祈るしかなかった。

「きゃっ!?」

 するとその時、美貴の尻にぞわっと何かが這うような感触がして思わず声を上げてしまった。