その老夫婦は“ろう者”だった。真山夫婦は花城と面識があるようで、彼の姿を見たら安堵したように笑顔になった。
「旦那様の手振り、あれって手話だったんですね。私、全然わからなくて……すみません」
この旅館には様々な人が来る。気が付かなかったとはいえ、客のうろたえてしまった。かえでが真山夫妻を部屋へ案内し、結局何もできなかった自分に情けなさがこみあげる。
「別に謝る必要はない、こんなところで突っ立ってないで早く持ち場に戻れよ」
そう言って笑う花城の優しい声音に少し救われた気になる。
(そういえば、彩乃ちゃんが花城さんは手話もできるって言ってたっけ……)
花城が真山夫婦を玄関先で手話を交えてもてなしている姿を見つめている時、総支配人としての彼の頼もしさをひしひしと感じた。終始笑顔で対応している花城の笑顔が、まるで自分に向けられているような気がして密かに胸が高鳴っていた。
(花城さん、あんなふうに笑うんだ……)
花城がその場を後にし、自分も仕事に戻ろうと足を進めた時だった。
「真山夫妻が到着されたと聞きましたが、どうやらお部屋へ案内は済んだようですね、深川さん?」
いつの間にか横に立っていた藤堂に声をかけられて、知らずの内に惚けていた顔を引き締めた。
「すみません! ぼーっとしてしまって……花城さんって手話が得意なんですね、弓道もすごいし」
「彼は総支配人になると決めた時に、どんなお客様でも対応できるようにと手話を独学で学んだようです。確かに語学も堪能ですしね、こちらとしても助かってますよ」
「そう言えば、藤堂さんと花城さんは昔からのお付き合いなんですか?」
美貴が言うと、藤堂は意表をつかれたように一瞬どもる。
「旦那様の手振り、あれって手話だったんですね。私、全然わからなくて……すみません」
この旅館には様々な人が来る。気が付かなかったとはいえ、客のうろたえてしまった。かえでが真山夫妻を部屋へ案内し、結局何もできなかった自分に情けなさがこみあげる。
「別に謝る必要はない、こんなところで突っ立ってないで早く持ち場に戻れよ」
そう言って笑う花城の優しい声音に少し救われた気になる。
(そういえば、彩乃ちゃんが花城さんは手話もできるって言ってたっけ……)
花城が真山夫婦を玄関先で手話を交えてもてなしている姿を見つめている時、総支配人としての彼の頼もしさをひしひしと感じた。終始笑顔で対応している花城の笑顔が、まるで自分に向けられているような気がして密かに胸が高鳴っていた。
(花城さん、あんなふうに笑うんだ……)
花城がその場を後にし、自分も仕事に戻ろうと足を進めた時だった。
「真山夫妻が到着されたと聞きましたが、どうやらお部屋へ案内は済んだようですね、深川さん?」
いつの間にか横に立っていた藤堂に声をかけられて、知らずの内に惚けていた顔を引き締めた。
「すみません! ぼーっとしてしまって……花城さんって手話が得意なんですね、弓道もすごいし」
「彼は総支配人になると決めた時に、どんなお客様でも対応できるようにと手話を独学で学んだようです。確かに語学も堪能ですしね、こちらとしても助かってますよ」
「そう言えば、藤堂さんと花城さんは昔からのお付き合いなんですか?」
美貴が言うと、藤堂は意表をつかれたように一瞬どもる。



