その唇に魔法をかけて、

「それよりさ、さっきの響兄ちゃんかっこよかったでしょ?」


「え? うん、そうだね」


「私、いつも練習してる中休みによく見に行くんだ。ずっと弓道してて八段なんだよ」


 弓道界の八段とは藩士レベルで、練達の域に達した那須与一にも負けじ劣らずの腕前だ。


「その他にも手話だってできるし、英語だってペラペラなんだよ」


 彩乃はまるで自分のことのように得意げに花城のことを話す。


「マネージャーの藤堂さんとは小学生の頃からずっと一緒なんだって、二人とも超イケメンだからそれ目当てで黎明館に来る人もいるくらい」


「あはは、そうなんだ。でもわかる気がするよ」


 花城も藤堂も目を引くイケメンだが、お互いにまた違った魅力があり、どちらかを選べと言われたらそれこそ究極の選択になるに違いない。


「響兄ちゃんは、東京の大学を卒業したあと、黎明館で働く前に海外の有名ホテルのマネージャーやったりしてたんだよ」

 まだまだ花城の話は尽きないようで彩乃が再び口を開く。


「え? 東京の大学?」


「うん、なんだっけなー東華大学って言ってた」


「えっ!? 東華大学!?」


 美貴の卒業した大学も名の知れたところではあったが、東華大学といえば高校生の頃、通っていた予備校の模試でいくら頑張っても再検討を要すのD判定しかとれなかった超難関の大学だ。いっときは憧れて猛勉強したが、結局、美貴の手に届くことはなかった。意外にもその大学の卒業生だと言うことを知ると、ますます花城という男に興味が湧いてくる。