その唇に魔法をかけて、

「俺だって、お前のこと……世界で一番大切だって思ってるよ」

 ――俺だって、お前のこと……。

 花火大会で伝えられなかったあの時の言葉。美貴に伝えるべきではない。だから花火のフィナーレの爆音にかき消されてしまったのだと花城は思った。あの日の気持ちをもう一度、伝える。「世界一」ということをつけ足して。

「わっ。は、花城さん?」

 いきなり開かれた新聞が美貴の目の前を覆う。すると、隙ありというように甘い水音を短く立てて唇を啄まれた。

「誰も見てないからいいだろ? お前が可愛いこと言うから悪い」

「は、花城さ――」

「だから、お前に俺からの魔法をかけてやった」

 新聞に覆われているせいか、その圧迫感と密着感に美貴の胸がドクンと鳴る。

「え? 魔法?」

 花城の吐息が唇にかかるくらいの近距離に、ここが飛行機の中であることも忘れてしまいそうになる。

「俺から一生離れられない魔法だよ」

 そう甘美に囁かれて、美貴は幸せを感じながら再びその魔法の誘惑に酔いしれていった――。   END