その唇に魔法をかけて、

 道路の混雑もなく、無事に美貴達は成田空港へたどり着いた。

 前回ここへ来た時はあまりいい思い出はなかった。今でも花城と別れたエスカレーターを見ると再び切ない気持ちが思い出される。しかし、今は違う。あろうことか隣にいるのは紛れもなく二度も振られてしまった花城なのだ。美貴にとって、まさにこれは奇跡だった。

 見送りの水野は、すぐにグランドシャルムに戻らなければならないようで空港を後にした。水野に別れを告げ、花城とふたりきりになる。

「お前、どうした? さっきから浮かない顔してるな」

「え……?」

 そう指摘され、自分では意識していなかったが、浮かない顔で花城に心配をかけてしまったようだ。

「すみません。ちょっとおセンチは気分になってただけです」

「そうか」

 なにも多くを語らず、ポンと花城の手が頭に手を乗せられた時だった。