その唇に魔法をかけて、

 一週間後。

 美貴は花城とともに台湾に渡ることを政明に告げ、ついに旅立つその日がやってきた。花城は一度台湾に戻り、美貴の準備が整い次第、再び日本へ迎えに戻ってきた。

「美貴。また私のもとから離れてしまうのか……」

「政明様、美貴お嬢様は立派な大人になられたのです。いい加減子離れしてはいかがですか?」

 グランドシャルムのエントランスで従業員に見送られ、その中でただひとり美貴の父である深川政明だけは浮かない顔で何度もハンカチで鼻をすすっていた。

「パパ。台湾なんて日本と近いよ? すぐに会えるんだから」

「美貴。寂しくなったらいつでも帰っておいで、それからたまに自家用ジェットで様子を見に行くからね。台湾の黎明館に格納庫はあるのかな?」

 これは政明の冗談ではない。本気で言っているのだ。そんな父に美貴は乾いた笑みを漏らす。

「大丈夫ですよ。そんな心配するようなことさせませんから」

 戸惑う美貴をフォローするように花城が会話を繋ぐと、政明は少し面白くなさそうにそっぽを向いた。