その唇に魔法をかけて、

「美貴……一緒に台湾に来てくれないか?」

「え……?」

 真摯な眼差しに射抜かれるように見つめられる。花城の真剣な表情は、嘘や冗談の欠片はない。すぐ目の前にある彼の瞳の中で自分の姿が揺れている。

「こんな状況で言うのはずるいのかもしれないけど……俺はもう、お前を手放したくはないんだ。誰にも渡したくない」

(花城さんと台湾に……?)

 あまりにも唐突な申し出に目を丸くして驚くと、花城は声のトーンを低くした。

「……嫌か?」

花城に差し伸べられたその手を掴むか掴まないか、美貴にはもう迷うことはなかった。

「……私、花城さんにいつも助けてもらってばかりだって思ってました。花城さんを好きになって自分にできることってなんだろうって考えたんです。手話も勉強して仕事も自分なりに一生懸命やってきました。そうしたら花城さんが台湾に行くって聞いて頭の中が真っ白になっちゃって……けど、同時に夢ができたんです」

「……夢?」

 花城と離れ離れになってから密かに美貴の中で芽生えた希望、それは――。

「花城さんのいる台湾で仲居として働くことです。一度は断られちゃいましたけど、これって夢が叶ったって思っていいんですよね?」

 花城が大きく息を吸い込む気配がしたと思うと、思い切り抱きしめられた。そして、ぐっと苦しくなるくらい腕に力がこめられる。