その唇に魔法をかけて、

「いつまでそうしてるんだ?」

 早く抱きしめたくて痺れを切らした花城に背後から優しく抱きすくめられる。

「緊張してるのか? 心臓の音が聞こえるぞ」

「えっ?」

「ふ……そんなわけないだろ、お前の心臓の音が聞こえたら、きっとお前も俺の心臓の音が聞こえるはずだ」

 そう言いながら、項にあたたかくて柔らかいものが押し当てられる。震える花城の吐息が、彼も緊張しているのだと示している。触れられる度に新しい熱が生まれ、今にものぼせてしまいそうだった。

 美貴はたまらず勢いよく振り返り、真っ赤になった顔を俯かせたまま、そんな自分を誤魔化す。

「そういえば花城さん、空港からホテルまでどうやって来たんですか?」

 今の状況で交わす会話にしては他愛なさすぎる。それでも花城は優しく美貴に笑んだ。

「空港に着いた時、実はもう結納まで一時間とない状況だった。始めタクシーを拾おうかと考えたけど、高速の渋滞情報が出てたからな……それにバスや電車じゃ確実に間に合わなかったから、レンタルバイクをすっとばしてきた」

「え……バイク?」

 花城はかえでの旦那である翔の事故死をきっかけにバイクを封印しているはずだった。