その唇に魔法をかけて、

 世の中には結納などせず、そのまま結婚に至るカップルも多い。そう思うと、美貴はしきたりを重んじ、型にはまった家の人間なのだと改めて実感する。

(もっと自由になりたかったな……)

 世間話も交えて結納の儀が進められていく中、美貴は浮かない顔で窓の外を眺めた。青い空には風に乗って自由に流れる白い雲がゆっくりと流れている。

(花城さん……)

 心の中で最後に呟くと、龍也が結納品を差し出してきた。