その唇に魔法をかけて、

 そんなある日、美貴は珍しく総支配人室にいる龍也に呼び出された。

 ――部屋に来る時に温かいお茶を持ってきてね!

 そう言われて温かいお茶を盆に載せて部屋の前に立つと、いつか花城と藤堂が口論していた時の事を思い出した。

 けれど、もう花城はいない。今総支配人室にいるのは花城龍也だ。

 切ない想いが胸を締め付ける。雑念に囚われている場合ではないと、かぶりを振って部屋をノックすると龍也の陽気な返事がした。

「はーい、入ってちょーだい!」

「失礼します」

 頭を下げて部屋に入ると、今まで龍也と話をしていたらしい藤堂が美貴に振り向いた。自意識過剰だとわかっているが、なんとなく気まずさを覚えてしまう。