その唇に魔法をかけて、

 美貴を手に入れたい。けれど、傍にいるのが怖い。

 そんな二の足を踏んでいる間にも、とうとう美貴は完全に手の届かないところへ行ってしまった。

 とんだ腰抜けだと、花城はあれから何度も自己嫌悪に陥った。一度気持ちを精算するためには台湾行きはいい機会なのかもしれない。こんな気持ちのまま新しい仕事に向かうのは忍びないが、海の向こうにはやるべきことが山のように待っている。

 搭乗のアナウンスにはっとなる。今にも落ちそうな煙草の灰を落とし、最後の旨みを吸い込むと、ため息とともに紫煙を吐き出した。

「行くか……」

 花城は小さくぽつりと呟いて立ち上がる。

 初めて喫煙室を見わたすと、そこはまるで花城の心の中のように煙で澱んでいた――。