その唇に魔法をかけて、

「はな、しろさん……?」

 ほんのりと香る大人のフレグランスから、次第に煙草の匂いに変わる不思議な彼の香りにドキドキと胸が波打つ。人目をはばからず、花城はその抱きしめる腕に力を込めた。

(いやだよ……そんな、最後のお別れみたいに抱きしめないで……)

 その腕に締め付けられる度に胸がきゅっとなる。この抱擁の意味は花城にとってどういうことなのかと不安にかられた。

「なんでお前はそうなんだよ、平気で俺の中に入ってきてぐちゃぐちゃにかき乱していく……俺だって、そんな強い男じゃない。俺を試すような生意気な真似するなよ」

「す、すみません……」

 本気で怒っているような口調というよりも、刺のない声音だった。そのことに安心していいものかと、戸惑ってしまう。

「これ以上、俺を惑わすな」

「え? うわっ」

 すっと花城の身が離され、いきなりくるりと半回転させられると、花城に背を向ける格好になった。

「花城さん……?」

 両肩に置かれた花城の大きな手に一瞬力がこもった。それは何かを訴えるようにも思えたが、美貴には花城の意図がわからなかった。