その唇に魔法をかけて、

 同じ場所を何度も何度も巡っては、人違いだったりしてなかなか人だかりから花城の姿を見つけ出すことは容易ではなかった。着物姿で観光客からは好奇な目で見られたがお構いなしだ。

(こっちにもいない……)

 刻々と時間が差し迫る中、美貴が方向を変えて踏み出そうとしたその時だった。

「お前……こんなとこで何やってんだ」

「あ……」

 すると、そこには驚きを隠せず信じられないといったふうに美貴を見つめる花城が立っていた。ライトグレーのスーツにビジネス用のスーツケースを片手にして、何度も瞬きをしている。

「花城さん!」

 ようやく見つけることができた喜びに思わず顔がほころぶ。しかし、花城はそんな姿を見て険しい表情になった。

「……なんでここにいるんだよ?」

 そう言われて美貴の笑顔が凍りつく。

「なんでって……お見送りに来たんです。探しました」

「そんな着物でうろうろしてたら目立ってしょうがないだろ? だから、お前だってすぐにわかった。それにお見送りならさっきみんなにしてもらったが?」

「個人的にお見送りがしたかったんです」