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 ドアの向こうで力ない美貴の足音がとぼとぼと遠ざかっていく。

 その気配が完全に消えるまで花城は身動きせずに総支配人室でひとり佇んでいた。そして重いため息ばかりついて額に手をあてがう。

 あんな事を言うつもりではなかったが、結果としてこれで良かったのだ。と、罪悪感に囚われそうな自分に言い訳をして、花城は仕事を再開しようとしたがとてもそんな気分にはなれなかった。

 急遽台湾へ行かなければならないことは、いつか話さなければならないと思ってはいたが、まさかあんな形で言う事になるとは思いもよらなかった。