その唇に魔法をかけて、

 そんな花城は何もなかったかのように平然と冷茶を飲みながらひと息ついている。そして、思い切って許嫁のことを聞かなければ、とゴクリと喉を鳴らした。

「なんだ? なにか話があるのか?」

 花城が神妙な面持ちの美貴に近づく。距離が縮まる度に緊張が増す。

「……はい、お忙しくなければ」

「俺に忙しくない時なんてない。けど、話を聞くくらいの時間はある」

 花城はまるで仕事や同僚関係の悩みでも聞くような気構えだった。

 自らの発言で花城の表情が凍りついたとしても、はっきりさせなければずっとしこりのままだ。と美貴はもう一度生唾を呑み込んだ。

「……私と藤堂さんが許嫁だって話……詳しく教えてください。どういうことですか?」

「え?」

 予期せぬその質問に、案の定、花城の顔がこわばった。しばらく一点を見つめて言葉を考えているようだったが、花城は観念したようにぽつりと言った。