その唇に魔法をかけて、

「なんだ?」

「え? あ、いえ……」

 仕事をしている花城に思わず魅入っていると、キーボードを打つ手を止めた花城と目が合った。

「すみません、お邪魔しました!」

「いや、別にいい」

 ぶっきらぼうに言われて、邪魔をしてしまったのだと慌てて部屋を出ていこうとすると、花城が「う~ん」と唸る。そして思い切り背伸びをして椅子から立ち上がった。

「悪いな、急ぎの書類だったんだ。お茶、ありがとな」

 唇を結んだまま花城が頬を緩める。ほんのひと時、忙しさから解放された花城はいつもの彼だった。

 同じ空間に花城とふたり。一度ふられているにも関わらず、抑えようのない感情が溢れそうになる。早鐘のような鼓動を聞かれてしまうのではないかと思うくらいに、心臓が反応している。