その唇に魔法をかけて、

「あ、の……離してください。誰か来たら困ります」

「響也は唯一無二の友人だ……けど、深川さんだけは渡したくない。僕はずっとあなたのことが――」

 これ以上のことを藤堂の口から聞いてはならない。なぜなら自分の想い人は彼ではないからだ。そんなことを聞けば、きっと罪悪感に押しつぶされてしまう、そんな気がした。

「やめて!」

 声を荒げると、背後で小さく息を呑む気配がした。

「……すみません。ちょっと……どうかしてました」

 正気に戻った藤堂がゆっくりと絡ませた腕を解いた。そして感情に任せて犯してしまった失態に気まずい表情を浮かべた。

「失礼します」

 そんな姿にかける言葉も見つからず俯いたまま、美貴は藤堂に向き直ることもなく部屋を後にした。