その唇に魔法をかけて、

「花火大会には響ちゃんとふたりで行ったんでしょ?」

「……はい」

「でも、それにしては美貴ちゃん、あんまり幸せそうに見えなかったから……ついね、お節介だってわかってる。けど、響ちゃんを遠くで見つめる美貴ちゃんの目が、切なくてねぇ」

 やはりかえでは何もかも見ていてお見通しだった。力なく笑うと、観念したように美貴は口を開いた。

「……私、花城さんに振られちゃいました」

「美貴ちゃん……」

「彩乃ちゃんから聞いてたんです、ずっと好きな人かいるんだって……でも、結構昔の話だから大丈夫だって彩乃ちゃんに励まされて調子に乗っちゃったんです」

 レモンサワーの入ったグラスが大粒の汗をかきはじめる。それはまるで心の中で泣いている自分の涙のように見えた。