その唇に魔法をかけて、

 美貴は自分の弱さを呪った。真実から逃れ、いい思いだけしたい。花城と気まずい空気になるのが怖かった。

(告白したけど、私、振られたんだよね……?)

 盛大な花火の音が消え去ると、波の音が虚しく響く。

 思い切って花城に好きだと告白したが、結果的には花城を困らせるだけだった。あんな顔をさせるくらないら言わなければ良かったと後悔したが、心のどこかでは気持ちを伝えられたということに安堵していた。ほっとしているはずなのに鼻がツンとしての目の周りが熱を持ち始めた。

「泣いてるのか?」

「……いいえ、大丈夫です」

 花城をこれ以上困らせたくない。それに、美貴の心の中はぐちゃぐちゃだった。悲しいのか切ないのかよくわからない感情が渦巻いて、今にも熱いものがこみ上げそうになった。

「泣いてません」

 虚勢のようにもう一度言う。

 瞳だけを濡らして、雫がこぼれないように何度も上を向いたりそっと目尻を拭ったりした。おそらく花城は泣いていることに気がついていると思うが、彼は敢えてなにも言わなかった。それだけは救いだった。