その唇に魔法をかけて、

 しばらく歩き、花城に連れられて来たのは花火大会のメイン会場をすり抜けて、木々の生い茂った斜面を下ったところに広がる浜辺だった。

 会場にはたくさんの人がひしめき合っているというのに、この場所だけは誰も人がいなくて静かだった。漣の音だけが心地よく聞こえる。

「ここは?」

「うちのプライベートビーチだ。ここなら花火もよく見えるし誰にも邪魔されない。あんな人だかりじゃ、せっかくの花火も堪能できないからな」

(プライベートビーチ!? そんなのあったんだ……さすが花城さん)

 セレブな彼に感心していると、さっそくオープニングの花火の嵐が打ち上げられた。色とりどりの花火が煌めいてそれが煙と化し、海月のようにふわふわと夜空に消えていく。

「綺麗ですね、花火なんて見たの久しぶり……」

「そうか、俺なんか毎年この花火をここで見てる」

 “誰とですか?”

 無意識にそう質問してしまいそうになり、出かけた言葉を慌てて呑み込んだ。

(花城さんの好きな人と? それとも――)

 次々と美しい花火が打ち上げられている中、悶々とした何かが湧き出しそうになって首を振った。せっかくの花火なのに、余計なことを考えたくない。