その唇に魔法をかけて、

 花火大会当日。

「あの、本当にもうあがっちゃってもいいんですか?」

「いいっていいって! なんだか今日の美貴ちゃん、ずーっとウキウキしてたし、響ちゃんとデートなんでしょ?」

「デ、デートって! そんなんじゃ――」

 花火大会というイベントがあってか今日の黎明館は普段よりも忙しない一日だった。早番だったにも関わらず気づけば二時間も残業していた。自分の仕事が終わっても後片付けに追われているかえでや彩乃を見ていたら帰るに帰れなくなってしまったのだ。

「いいのよ、ただでさえいつも残業してもらっちゃってるし、もう十分だから。こっちは気にせず行ってらっしゃいって! あと三十分もしたら始まっちゃうわよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」